産業キャリア教育プログラム~授業紹介~

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【技術論3】KDDI 第3回「ユビキタスネット社会におけるネットワーク技術の応用」

講師:KDDI株式会社 濱井龍明氏

1. ユビキタスネットワークについて
2. ユビキタスネットワークの研究開発
3. アドホックネットワーク技術の展望と課題
4. ユビキタス・アドホック関連研究取り組み紹介
5. おわりに


1.ユビキタスネットワークについて

1970年代は人がCPUの周囲に群がる時代でした。1980年代には小型化が進み、1990年代には卓上できるまでのサイズダウンが実現しました。2000年代にはモバイルが進行しました。2010年代に向けては、ウェアラブルとユビキタスがキーワードになってきました(ユビキタス・コンピューティングという言葉自体は1990年代頃から用いられていましたが、本格的に研究されるようになったのは比較的最近です)。身につけられるコンピュータ、CPUが人に群がる時代、といわれています。もっとも、現時点ではまだ研究段階です。しかし、30年間の技術進歩は目覚しく、ダウンサイジングと価格破壊、商品の普及が急速に進みました。時計など他の技術が進歩するにつれて当然のごとく身に付けられ、周囲にあるのが普通になっていたように、情報通信技術も普遍的になっていく可能性があります。

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ユビキタスとはどこにでも存在するという意味です。1988年にマーク・ワイザー氏が「ユビキタス・コンピューティング」の研究が開始されたことに遡ります。アメリカでは、メインフレームから、パーソナル・コンピューティング、ユビキタス・コンピューティングへと発展していきました。しかし、日本ではパソコンよりもモバイルが先にパーソナル化したため、ユビキタス・ネットワーキングとして注目されました。

 ユビキタスネットワークに絡んで、将来日本が抱える課題へ対応するためのIT化についての構想、u-Japan構想というものがあります。高齢化・少子化対応、グローバル対応、防災対応、デジタル・デバイドの解消、万全なセキュリティが課題に挙げられ、それらを解決するためのユビキタスネットワークが提唱されています。

 ユビキタスネット社会の基本路線は、いつでも、どこでも、誰でも、何にでもネットワークに接続できること、そしてあらゆる「モノ」のネットワーク化を進め、人と人から人とモノ、モノとモノの通信と情報を共有することにあります。放送と通信の融合、モバイルの進化、ブロードバンドの進化を通じて、ビジネススタイルとライフスタイルの変革を行っていくことを目的にしています。

 ユビキタスネットワークの基本コンセプトは①人にやさしいインターフェース②人の活動を自然に認知③自己環境の自動構築④自己環境の再現⑤プライバシー管理⑥安全安心社会の実現です。

 それではユビキタスネットワークで要求される技術とは何でしょうか。一言で述べると、バーチャル空間よりもリアル空間を重視した技術になります。具体的には①コネクティビリティ②多種多様な端末のサポート③単目的、シンプル、小型端末④センサーネットワーク⑤コンテンツハンドリング⑥セキュリティなどがあります。


2.ユビキタスネットワークの研究開発

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 日本のユビキタスネットワークの産学官連携研究開発についてのお話を伺いました。ユビキタスネットワークの取り組みとしては平成15年から5ヵ年計画で、ユビキタスネットワークの研究開発が始まり、学会活動や標準化活動などを通じた国際交流が始まっています。また電子タグの取り組みとしては平成16年度から4ヵ年の計画で、ユビキタスネットワーク社会の実現に向けて電子タグの活用について研究開発が始まっています。センサーネットワークへの取り組みも同様です。ユビキタスネットワークとロボット技術を融合するネットワークロボットについては平成16年から5ヵ年計画の研究が始まっています。これらの統合連携が行われています。

 その中で電子タグ(RFID)とネットワークロボットについて具体的なお話を伺いました。電子タグは、モノにタグをつけることでモノの流れの高度化、人にタグをつけることでE-コマース、周囲の環境にタグをつけることで環境センサーネットワークを実現します。モノの流れの高度化の具体的な例としては、固定・携帯電話等を利用して流通業界との連携によりモノの流れの総合管理を行うことなどが挙げられます。E-コマースの例としては固定アクセス回線等に接続された電子タグのリーダーライタを用いたチケットの発券管理があります。環境センサーネットワークとしては、現在開発中の技術ですが、携帯電話などに搭載された電子タグリーダーライターを用いて閉鎖空間などでの位置確認などを行う技術があります。MachineとMachineでつながれたビジネスをM2Mビジネスと総称しますが、電子タグにより、M2Mビジネスは拡大傾向にあります。

 携帯電話による電子タグのサービスとしては①トレーサビリティ②GPS統合位置管理③電波ポスター④プレゼンスサービスを御紹介いただきました。
GPS統合位置管理について図を用いて視覚的に御解説いただきました。壁や天井埋め込みのリーダー間隔またはRFIDタグ間隔のとり方とリーダーとタグ間の感度距離を調整することにより位置精度を自在に上げることが可能です。技術的には完成していても実用化は残念ながらされていません。

 その後、センサーネットワークの海外研究開発事例、国内開発事例の御紹介を頂きました。
さて、ユビキタスネットワークにおいては、電子タグやセンサーの埋め込まれたあらゆるモノと情報家電が連携するネットワークとして規模が急速に拡大していくため、超大規模・複雑系ネットワークの経路制御技術の確立が必要になります。そこで、ロボットとの連携へと発展していきました。それがネットワークロボットです。現在人にやさしいネットワークロボットの開発が行われています。インテリジェント化により人と機械のインターフェースが易しくなる、自立分散化により人と人とのインターフェースが円滑になる、自己組織化により機械と機械が有機的に結びつくなどの構想があります。


3.アドホックネットワーク技術の展望と課題

 ユビキタスでは、センサーネットワークの発展が必須になります。そこからアドホックネットワークが注目されるようになります。国内通信の情勢としてはブロードバンドネットワークの普及(通信・放送融合)、携帯電話利用者の増大(パーソナル化)、携帯電話モジュール等によるマシーンとの連携、公共空間から家庭空間へという流れがあります。更に、少子・高齢化対策や犯罪防止、災害対策などの社会的課題を解決するための技術開発が求められるようになってきています。これらの実現にはセンサーネットワーク技術の確立が必要です。

 それでは、アドホックネットワーク展開のための技術とはどのようなものなのでしょうか。大きくわけて3つあります。①ルーティング②QoS(Quality of Service)③Plug&Playの3つです。ルーティングは効率的でスケラーブルな方式の選択、QoS(Quality of Service)はスルーパケットとパケット品質の確保、Plug&Playは自律分散によるシステム構築の柔軟性です。アドホックネットワーク・ルーティングの技術にはプロアクティブ型、リアクティブ型、ハイブリッド型があります。プロトコル上の要求条件は、①経路制御に関するオーバーヘッドが少ないこと②マルチホップパスの経路交換が可能であること③動的なトポロジの変化に対応できること④ループができないこと⑤自立的な動作が可能であることです。

 プロアクティブ型の代表プロトコルはインターネットのルーティング方法と基本的には同じです。各ノードはあて先のシーケンス番号を保持し、隣接ノードからの経路情報により逐次更新し、ループを作らないようにするために利用します。各ノードはネットワーク内のすべてのノードに関する経路情報(参照テーブルと言います)を保持し、経路の更新や追加のために広報メッセージを送信、参照テーブルを書き換えていきます。参照テーブルとはあて先アドレス、あて先シーケンス番号、次ホップ、ホップ数、更新時刻などです。

 リアクティブ(オンデマンド)型の代表プロトコルはルート生成要求メッセージをフラッディングし、一度受信したメッセージはフラッディングしません。


4.ユビキタス・アドホック関連技術の取り組み紹介

 ネットワーク技術として、無線メッシュ網の研究開発とアドホックネットワーク・ルーティングについて、携帯電話との連携技術として携帯電話PTT(プッシュトゥトーク)サービスの実用化、携帯電話ローカルインターフェース・アドホックネットワークの研究開発、RFIDリーダー搭載携帯電話サービスの技術開発について御教示いただきました。


5.おわりに

 このセクションでは、将来に向けてのユビキタスネットワークサービスのビジネスの実現についてと、日本発の技術基盤の構築により世界に発信するための先端技術普及促進を目的とした政府、大学、研究機関、企業の連携についての御教授いただきました。

 現在2010年のユビキタスネット社会の実現に向けて産学官連携の取り組みがここ数年の大きな動きです。日本発をめざし、失われた10年を取り戻す世界戦略を持つ必要があります。無線を活用したシステムがユビキタスネットワークの重要アイテムです。

 最後にドラマ仕立てでユビキタス情報社会を平易に解説した3部作のデモを拝見いたしました。第1話は青年と友人との三角関係、第2話は小学生の夏休みと初恋など、馴染みやすいストーリーに仕立てて、わかりやすく未来へ向けた開発研究されている技術の紹介をするビデオでした。


(2008.6.12 担当K)

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