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【技術論3】KDDI 第2回「携帯電話付加サービス(位置情報サービス)」

講師:KDDI株式会社 濱井龍明氏

本日は携帯電話位置特定(gpsOne)について、その技術はどのようなものなのか、どのようなサービスが提供されているのか、これからどのようなサービスが生み出されていくのかをご解説いただきました。

1.携帯電話位置特定(gpsOne)とは
2.携帯電話位置特定(gpsOne)を利用したサービス
3.GPS複合サービス(将来)


1.携帯電話位置特定(gpsOne)とは

cdmaOne/cdma2000方式の特徴を活用した携帯電話の位置情報提供機能を携帯電話位置特定(gpsOne)と言います。アメリカのQualcomm社がcdmaOne通信チップ上にGPS機能を実現したのがはじまりです。日本では、auがeznavigationを2001年12月より開始しました。

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位置特定の手法には3つの手法があります。ネットワークベース方式、端末ベース方式、ハイブリッド方式です。ネットワークベース方式にはAOAを利用したもの、TDOAを利用したものがあります。AOAを利用する方法とは複数基地局から端末に向けたビーム(セクタ)の角度で位置推定を行うというものなので、あまり正確ではありません。TDOAを利用する方法は、複数基地局から電波が端末に到達する時間を測定して位置推定をします。正確な時間測定機能が必要になります。他方、端末ベース方式はGPSを利用したものです。こちらの方が精度は高いです。更に速度を高め、高精度を維持するために開発されたのがハイブリッド方式のgpsOneを利用した位置特定です。ハイブリッドというのはTDOAとGPSを組み合わせ、都市環境やインドア環境ではネットワークベース、郊外環境で端末ベース方式を採用するという使い分けを行います。

gpsOneの大きな特徴は、主に2つあります。1つはSnapTrack方式に基づき基地局から適切な情報を端末に提供し、衛星捕捉を極めて容易に実施することで、これにより衛星を捕捉してから諸情報を得る場合より大幅に時間が短縮できます。もう1つは、待ちうけパラメータを決め打ちしてCorrelationを行うことができ、そのために捕捉最低感度が大幅に向上(最大約20dB)したことが挙げられます。

それでは、基地局から流している情報とはどのようなものなのでしょうか。基地局からは主に3つの情報の提供が行われています。GPS捕捉用の情報、GPS位置計測用情報、そして端末からはマルチパス状況も報告されます。GPS捕捉用の情報とは可視衛星数、各衛星の位置、ドップラー量などのことです。GPS位置計測用情報としては基地局の概略緯度経度が挙げられます。

cdmaOneによる位置同定能力はどのようなものでしょうか。cdmaOne基地局は全てGPSに完全同期しています。チップレート1.2288Mcpsにてパイロット信号がGPS時刻と同期して拡散されて送信されます。端末から基地局への報告提供は、端末伝播時間を最高1/16chipの精度で報告可能になっています。基地局と基地局はGPSで完全に同期されています。

gpsOneの測位モードは、GPS衛星測位モードのとき一番精度が高いものになります。PDE(位置情報サーバ)より、セルラーを通じてGPS衛星捕捉のための情報を端末に送るため、通常のGPSより高速かつ高感度でGPS測位を行えます。その次が、GPS衛星とネットワークを組み合わせた測位モードのときで、一番精度が低いのはネットワーク測位モードのときです。インドア環境などではGPS衛星が不可視になります。それでも、ネットワーク測位に切り替え、精度は劣っていても最低限の測位は可能になるのがcdmaOneのメリットの1つです。

さて、それでは、このGPSというのは具体的にどのようなものなのでしょうか。GPS信号は、基準周波数、搬送波、PRNコード(擬似雑音記号)、航法メッセージからなります。基準周波数は、GPS信号生成の基準となるもので、原子時計により精度を上げています。GPSはアメリカ以外は使用不可能でしたが、その後、民間開放されました。これはアメリカの軍事技術の優位の基盤になっているものだからです。現在、搬送波は民間に開放されています。PRNコードはデジタル符号が乱数的な暗号の形態をなしていて、乱数表に相当するコードパターンにより情報内容を解読できるというもので、これはCDMAの技術として現在の第3世代移動通信にも利用されています。C/Aのみ民間に開放されていて、PコードとWコードは軍用のみとなっています。航法メッセージはエファメリとアルマナックがあります。エファメリは放送している衛星自体の詳細軌道情報です。アルマナックは全衛星の概略軌道情報です。

このGPSの技術には相対性理論が重要な役割を果たしています。GPS衛星搭載の時刻と地球の時刻は、後述する2つの要素により時間ズレが生じています。衛星の方が地球よりも時間が進んでいるのです。そこで衛星搭載時計の周波数を一部オフセットしてUTCに同期させます。そのとき、高速(秒速4km)で運動するGPS衛星による発信信号の時間の遅れを特殊相対性理論で、地球の重力場の影響(高度2万km)による地球の時間の遅れ(=衛星の時間の進み)を一般相対性理論で捉え、修正するのです。


2.gpsOneを利用したサービス展開

cdmaOneという技術を用いて、具体的にどのような携帯情報サービスが提供されているのでしょうか。このセクションでは、auのサービスとしてEZ@NAVI、EZナビウォーク、GPSMAP、EZお探しナビ、EZ助手席ナビ、災害ナビなどを御紹介いただきました。

 Eznavigationは前述したようにau がgpsOneを利用した位置情報の提供を行っているサービスです。位置情報をURL形式にて情報を提供可能なので、多くのアプリケーションへの適用が可能です。そして他のアプリケーションプラットフォームとの連携が可能です。

 次に、GPS利用した災害通信サービスの現状についてのお話を伺いました。気象庁の発表する「災害地震速報」を携帯電話で配信するサービスが始まっています。携帯電話のGPSと地図表示により、避難場所等の誘導を行うことができます。またインターネットあるいは携帯電話により、自分の安否情報を伝言板として家族等に知らせることができます。災害ナビは避難場所への誘導を行うためのサービスです。そのほかにも災害ナビには災害伝言板という100文字までのメッセージを残せる伝言サービスも提供しています。


3.GPS複合サービス(将来)

このセクションにおいては、今後の位置特定技術に関する高度化と防災・安否情報サービスについてのお話を伺いました。防災・安否情報サービスは緊急情報を受信して、端末から本人IDと位置情報(GPS)メッセージを放送局に送信し、データ放送により安否確認情報を発信するというサービスです。


(2008.6.5 担当K)

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